ピンクフロイドといういい記憶

ロンドンはビクトリア&アルバートミュージアムで開催されている「Pink Floyd: Their Mortal Remains」展に。観られるかなあと思っていたのをラッキーにも観ることが出来ました。

「デイビッドボウイ・イズ」展のようにオーディオ・ビジュアルを重きを置いた展覧会。ボウイよりずっとオーディオの要素が強くなっています。

なのでゼンハイザー製のヘッドセットの数に合わせて入場制限が。ぼくは45分待ちました。美術館内なのでキリスト磔刑のステンドグラスのコレクションが近くにあり、「雰囲気合わないなあ」と思いながら楽しめました。

でも実際は入ってみるとすごいひとの数。とくに60年代ロンドンのUFOクラブの雰囲気を再現した頃の狭い通路では展示観られないほど。フットボールの試合かよというかんじです。

そこを出るとアルバムというかピリオドごとに展示が広がっていきます。意外なほど大きかったのは初期のリーダー、シドバレットのコーナー。いろいろおもしろいものが展示されています。画像や楽器や当時のポスターや。

各コーナー前で楽曲が聞こえてきます。それと同時に多く目につくのは楽器。とくにピンクフロイドの場合はメロトロンやモーグなどの電子楽器。

この展覧会でおもしろかったのは「The Dark Side of The Moon」のころまでは録音技術に焦点があたっていたこと。こんなふうにロジャーウォーターズとデイビッドギルマーがいかに音づくりをしていたかというのは興味ぶかい展示です。

いっぽうでそのあとはシアトリカルなステージに焦点があたっていきます。

観客動員数が増えていくにしたがって避けられない流れだったともいえます。よくいえば観客を楽しませてくれるため、悪くいえばより動員数に拍車をかけるため。代表的なものは「The Animals」と「The Wall」ですね。

その巨大な舞台セットの一部がこのように展示されています。「The Wall」ツアーに登場する巨大なセンセイのフィギュア。迫力です。このときにピンクフロイド最大のヒット曲といわれる「Another Brick in The Wall Part 2」がかかるので、みんなこの場から動きません。いいかんじです。

展示ではこのころウォーターズの父親を第二次大戦で亡くしている思い出と反戦や反体制という思想性が色濃くでてきたことをしっかり見せています。

当時のサッチャー首相(とフォークランド紛争にまつわる)戯画が掲げられ、となりにはおウォーターズに「こんなことのためにぼくの父さんは死んだのか」というコメントも。

ピンクフロイドがおもしろいのは楽曲はポップになっていくいっぽうで(ウォーターズが脱退するまえは)思想性が強くなっていったことです。もっともリックライト(下の写真の左)などは「もうその話はいいよ」と言ってウォーターズにクビにされてしまうわけですが。

ウォーターズ脱退のあとリックライトが戻ってきてこんどはベーシスト抜きのピンクフロイドになります。このころぼくはピンクフロイドから離れていました。

でも最後に(デイビッドボウイ・イズ展のように)マルチスクリーンで最近のライブをやります。「Comfotablly Numb」です。それはとてもよいんです。ウォーターズがベースを弾いていて。

ウォーターズの体制批判はいまも続いていて、最新アルバムのタイトルは「Is This The Life We Really Want?」。でもこの展覧会ではそのコンセプトは排除されていました(ソロは展示なし)。すこし残念な気も。

ピンクフロイドはなんとなく心地よい音楽をやるバンドとして始まり、独自の音楽性を打ち立て、他にはないエンターテイニングな要素を持つようになった、ユニークな存在です。そのいっぽうで生硬な体制批判が若い層に比較的うまくハマったりして長い寿命を持ってきました。

それが伝わってくる展示会でよく出来ています。もういちど行きたいと思わせる内容があります。

ショップではビニール盤が売っていました。ほとんど持っているので(最近では「The Dark Side of The Moon」の初期マトリックス盤を購入…)さっと観ただけですがジャケットのセンスがよかったのもこのバンドの特徴だなあと改めて。

ogawa fumio HP

小川フミオのホームページ フリーランスのライフスタイルジャーナリスト クルマ、グルメ、ファッション(ときどき)、多分野のプロダクト、人物インタビューなど さまざまなジャンルを手がける 編集とライティングともに得意分野で企業の仕事もときどき 「朝日新聞&M」「GQ」「UOMO」「openers」などライフスタイル系媒体に 紙とウェブともに寄稿中