ソウルのチョッパン

さいきん読んだのが「搾取都市ソウル」。タイトルのセンスはともかく、ガツンときた。
テーマは「パラサイト」などでも出てくる半地下の生活のようなギリギリの住居の実態。
韓国の新聞記者である著者のリポートによると、一坪半ぐらいの住居に住むひとたちの数の多いこと。
仕事がなくてホームレス一歩手前の状況に追い込まれた人たちの「チョッパン」と呼ばれる住居形態が、ソウルでは増えているというのだ。
一坪半って四畳半どころじゃない。三畳。そこに生活のすべてを詰め込んで暮らしている。窓はおろか暖房すら期待できない。
チョッパンは本来、一室だった部屋を細分化した住居。本を読んでいて蜂の巣を連想した。あちらの役所によると「住宅以外」に分類されるチョッパンに住む人の数は、2005年には5万世帯だったのが、15年には39万世帯にまで増加したそうだ。
月払いができて、かつ家賃が低い(著者は「坪単価でいうとちゃんとした住宅借りるよりうんと高い」と憤っているが)のが、チョッパンに住む人が減らない理由とされている。
チョッパンは違法なので、行政は閉鎖を命令することも出来るが、そうなると、住人はホームレスになってしまうそうだ。それで黙認。
チョッパンのオーナーは、投資として、住宅をチョッパンに改造して、貸し出すひと。税金の補足も免れてしまうので、10部屋も貸せば、いい身入りになるんだそうだ。
じつに考えさせられる本。

ogawa fumio HP

小川フミオのホームページ フリーランスのライフスタイルジャーナリスト。 クルマ、グルメ、ファッション(ときどき)、多分野のプロダクト、人物インタビューなど さまざまなジャンルを手がける。 編集とライティングともに得意分野。ライフスタイル系媒体を中心に紙とウェブともに寄稿中。