新旧食べ較べ

パリで歴史の長いレストランと、新しい注目のレストランと二つに行くことが出来ました。ひとつは「Le Grand Vefour」。前身は1784年のオープン。ナポレオンもジョゼフィーヌとともに食事に訪れたという。

いまはギ・マルタン氏がオーナーシェフを務めているようです。最大の特徴は歴史的遺産としていっさい勝手に手を加えてはいけない重厚な内装。そして海のものと山のものとを合わせるシェフの料理といえます。

上はオマール海老の出しが効いたスープ。上品なブイヤベースというかんじで食欲を昂進させます。しょうがの香りなどもほのかにして丁寧な作りでなかにココナッツミルクのフォンダンが入っています。

こちらはメインの子ガモ(メス)。ザリガニとありましたが甲殻類の香りがほのかにするソースがかかっています。そこにはピスタチオが香りを加えています。手前は季節の野菜であるアーティチョーク。


デザートはイチゴとフロマージュブラン。ほのかなバジルのソースがアクセントになっています。酸味もそれなりに強くて初夏を強く感じさせます。

いっぽうもう一軒は「Restaurant ES」。本城 昂結稀シェフが7区に3年前に開いたレストランで、いちど行ってみたいと思っていたところについに出かけることが出来ました。

こちらは東京のフランス料理店にも通じるミニマルな雰囲気。眼の前では「Ancient Abbaye de Panthemont」をほぼゼロベースで再建する大きな工事が進行中。レストランでの食事に影響が出るようなことはありません。逆に完成したらかなりいい立地ということになりそうです。

まず驚いたのがノルマンディのポンクレのバター。こんなにおいしいバターを食べたことがないっていうぐらい風味がよく美味。ふだんバターは食べないぼくも3分の1も食べました。となりのフランス人ふたり組は一瞬でバターを食べきっていました。


魚料理は「ブルターニュ産の、チュルボにピスタチオの泡」。チュルボは欧州でとれるカレイの一種とされています。適度に味がしっかりしていて、軽い野菜のソースとうまくバランスされています。

こちらは「ブルターニュ産ポーク、赤ピーマンのソースとチョリソのソース」。モリーユ茸は「高いけれど今日はしっかりしたものが買えました」とのことで、シェフがたっぷりサービスしてくれました。ソースはほとんどかかっていません。

ポークはミキュイで仕上げてあり、フランス人が「こういう料理は食べたことがない」と驚いたのもわかります。そこかしこで一所懸命というかんじで写真撮っていました。

これは日本人女性パティシエ−ルによるイチゴのシブースト。溶けてなくなりそうなやわらかい仕上げで飴細工で支えています。やはり酸味が残されていて初夏だなあとつくづく思わせられる一品でした。

シェフは客席に料理を運びながら説明をしていて、これもいいかんじです。新しいフランス料理としてとてもいい、とフランス人が評価するのがよくわかる気がしました。


ogawa fumio HP

小川フミオのホームページ フリーランスのライフスタイルジャーナリスト。 クルマ、グルメ、ファッション(ときどき)、多分野のプロダクト、人物インタビューなど さまざまなジャンルを手がける。 編集とライティングともに得意分野。ライフスタイル系媒体を中心に紙とウェブともに寄稿中。