デルトロとルチャリブレ
「シェイプ・オブ・ウォーター」がアカデミー作品賞を受賞したときは、ビックリした。
まさかギレルモ・デル・トロの作品が……。大ファンのぼくとしては、なんだか複雑な心境だ。
あの映画は大向こうウケを狙ったサブストーリーが多いのも特徴で……ゲイ、異人種、黄金時代のハリウッド映画、冷戦期。
ジョージ・クルーニーの「サバービコンSuburbicon」(2017)も傾向として同じといえるかもしれない。
ぼくとしては「シェイプ……」はルチャリブレを主題にした作品だと思っている。というと意外!と言われるのだけれど。
なにしろ……ルチャリブレとはメキシコ語でプロレスのことなのだ。
デルトロはメキシコ人でルチャリブレも大好きで、げんに「The Silver Angel」というマスクマンが主人公のテレビシリーズの脚本も執筆しているという事実をまず押さえておきたい。
「シェイプ……」のあのギルマン(エラ男)を観たとき、ぼくがすぐ思ったのは、顔からしてマスクマンそのもの!ということだった。
さらにそれが確信に高まったのは、ギルマンが水槽からぬっと姿を現すシーンのカッコよさ。あの演出はプロレス好きだからではないだろうか。
(ぼくは鉄腕アトムシリーズ「地上最大のロボット」でのトルコのロボットが海から姿を現すカッコいいシーンも連想したが……デル・トロはまさか読んでないだろう)
下の画像はデル・トロの世界を構成した巡回展「At Home With Monsters」(モンスターのいる家と、モンスターといると落ち着く、の両方の意味だろう)から。
これも「The Silver Angel」を主題にしたアートだ。
ルチャリブレとはメキシコの大衆娯楽そのもの。
そう考えると、「シェイプ……」にはディズニーの「Coco(リメンバーミー)」との共通点があるかもしれない。
イームズ夫妻もメキシコ旅行で大いにインピレーションを受けたというエピソードは、2017年にLACMA(Los Angeles County Museum of Art)でのメキシコ展で知った。
ということは「シェイプ……」にはもうひとつの隠された主題があるのか。国境に柵を並べメキシコ人に手錠をかけているトランプ政権下の米国のありかたへの批判だ。
メキシコにはゆたかな文化があり、おたがいに尊重しあわなくてはいけない、とハリウッドもそこが言いたくて賞をあげたのか。
で、「シェイプ……」のギルマンだが、いろいろなひとに追われ傷つく。理解者は女の子。となると……あれ? まさに梶原一騎原作「タイガーマスク」ではないか。
最後はタイガーと違いハッピーエンドなのだが。そこはデル・トロといえども活躍の場はハリウッドである。香港や台湾の映画とは違うのだ(ぼくは香港や台湾の映画が大好き)。
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