サリンジャーの映画
「ライ麦畑の反逆児 Rebel In The Rye」をようやく観た。
ダニー・ストロングが監督を務めたこの映画のテーマはとてもよい。
サリンジャーが「キャッチャー(イン・ザ・ライ)」を完成させたきっかけは、Dデイに兵士として参加した際の、強烈でネガティブな体験としている。
Dデイはノルマンディ上陸作戦で、2018年に日本でも公開されたWチャーチルが主人公の「Darkest Hour」もこのときへの決断が主題だった(あの映画の脚本を書いたニュージーランド人のアントニー・マカーテンは「ボヘミアンラプソディ」の脚本も手がけている)。
ライ麦畑とは戦場のことで、サリンジャーが自分を重ね合わせたホールデン・コールフィールドは、若き兵士たちを死から守りたいと思っているのだ、という解釈。
映画ではあまり出てこないが、サリンジャーが捕虜のドイツ兵の尋問を担当していたのも、じつは強烈なトラウマになっているという説もある。
ケネス・スラウェンスキーによる評伝「サリンジャー 生涯91年の真実」を下敷きにしているせいだろう、説得力もそれなりにある。
米国の映画なので欧州人の監督が撮ったら人物像の描きかたがまた変わっただろうが、サリンジャーの周辺の掘り下げかた、細部へのこだわりは逆に同国人の監督ならではかもしれない。
登場人物のファッションもいいし、家や酒や、もろもろにリアリティが出ている。
隠遁生活に入ったサリンジャーが買ったニューハンプシャーの家はホンモノに近いのかわからないが、これも説得力がある。
かつ、当時乗っていたのは、払い下げのような年季の入ったジープだったようで、それも出てくる。
よく調べたなあと感心する。
そういえば、映画では私の好きなケビン・スペイシーも好演している。
いろいろと印象に残る、これもいい映画だった。
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