天丼ってこれだった

天ぷらのように「江戸前」のものは、浅草から新橋(いまの東銀座)までが「ホンモノ」とか。天ぷら屋が「でも例外もある」というのが新宿の「つな八」だ。
数えきれないほど支店を持つ店である。食べるなら、絶対に新宿の本店にかぎる。店内はやや薄汚れてきた感もなきにしにあらずであるものの、味は天下一品だと思う。
私がここの天丼が大好きなのは、つゆにどっぷりとつけられているから。私が子どものころ、祖父が「ここのはおいしいよ」とつれていってくれた店はどこも、こんなふうだった。
パリパリなんてしていない。で、つゆは甘すぎないし、まったくしつこくない。いつからか、天ぷらは、揚げることばかりが語られるようになって、どれだけ少ない衣をつけたものを、どんな油で揚げるかばかり語られている。ような気がする。
天丼だって、よく目にするのは、メガ盛りのようなものばかり。パリパリ感ばかり気にするから、へんな混ぜものが入って、結果、胃にもたれることも。つな八のは、しみじみとした味である。

ogawa fumio HP

小川フミオのホームページ フリーランスのライフスタイルジャーナリスト。 クルマ、グルメ、ファッション(ときどき)、多分野のプロダクト、人物インタビューなど さまざまなジャンルを手がける。 編集とライティングともに得意分野。ライフスタイル系媒体を中心に紙とウェブともに寄稿中。