クラプトンの12小節の人生

上映中の「エリッククラプトン12小節の人生 Life In 12 Bars」を渋谷のシネクイントで観た。

音楽映画というか厳密にわからないが、いま「ボヘミアンラプソディ」が大ヒット中で、それに対してこちらは地味な公開。

12小節はブルース由来のタイトルだ。

さきにDVD化もされているのだが、クラプトンの伝記映画、おもしろいのだ!

音楽の背景は愛情(3つ出てくる)と解き明かし、最後にアルコール依存症から立ち直って「Unplugged」(1992)と収録曲「Tears in Heaven」を発表するときをストーリーの山としている。

ここはかなり心に響く。

「461 Ocean Boulevard」以降(Derek時代も含まれている)は依存症時代のたんなる作品と明快に切って捨てているかんじもたいへんおもしろい。

私の印象に残っているは同時代?からかクリームの頃とブルースブレイカーズ(ジョン・メイオールのことはずっと尊敬しているらしい)の映像の数かずだ。

米国アトランティックレコードのアーメットアーティガンに気に入られて米国のスタジオで録音するときのシーンもおもしろい。

マーシャルアンプの2段がさね、バスドラムスの2連、それにサイケデリックなファッションに米国人は度肝を抜かれたという。

「でもクリームを本当に評価してくれたのはフィルモアイーストの観客だった」とクラプトンは言っている。

それとパティ・ボイドへの想いが作らせたデュエインオールマンとの共作「Layla And Other Assorted Love Songs」の背景も興味ぶかい。

試行錯誤から始まってついにあの迫力あるリフにたどりつくところは、音楽の効果とともに観ていてかなり興奮する。

「すべての曲はパティを頭のなかに書いた」と言い、できあがった音源をパティを招いて聴かせる。

パティは「いいわねえ」と言ってじっくり聴くのだが、最後に「じゃあね」と言って帰ってしまう。

そのときクラプトンの落胆ぶり。

「(愛の告白だったのに)すべてが無駄だった All is for nothin'.」と落ち込むのだ。

なんともいじましい姿。

ファンにはクラプトンがいかにオシャレか、いかにクルマが好きかもわかっておもしろい。

たとえばメルセデス600のロングホイールベースを自分で運転しているシーンもある。

私はこれまでクラプトンはブルースブレイカーズとクリームの頃はすごいと思ったけれど、あとはまあまあかなと思っていた。

この映画でクラプトンを見直しました。

さっそくDiscogsで「Wheels Of Fire」と「Layla」のオリジナル盤を購入してしまった。

なにはともあれよく撮ったなあと感心する作品。

映画館で観るとジンジャーベイカーのドラムスもより迫力ある音でいいかんじだ。

クラブトンは映画の中で「クリームの時代は攻撃的すぎた」と話しているが。

何度も観たくなる映画である。

ogawa fumio HP

小川フミオのホームページ フリーランスのライフスタイルジャーナリスト。 クルマ、グルメ、ファッション(ときどき)、多分野のプロダクト、人物インタビューなど さまざまなジャンルを手がける。 編集とライティングともに得意分野。ライフスタイル系媒体を中心に紙とウェブともに寄稿中。