小さな独裁者のいいとこは
いま公開中のロベルト・シュベンケ監督の「小さな独裁者」を新宿武蔵野館で観た。
プロットがいまひとつで、ストーリー運びが強引なのがやや気になる作品ではある。
ナチスの軍服が好きなひとにはそれだけ観ていても楽しいかもしれないけれど。
(すごい質感の描写力なのだ)
それにもうひとつ、いいところがあった。
タイポグラフィーのセンスのよさだ。
冒頭部分とそれに最後のスタッフクレジットに顕著である。
書体も色もレイアウトも気が効いている。
私はこういうことを初めて意識させられた。
洒落た本を開いたときのようなレイアウトである。
そういえばもうひとつ、見どころがあった。
最後にスタッフクレジットが出る、そこの映像のおもしろさだ。
とくに最初のパート。
クルマが走るところである。
……ここでふと思った。
これ以上書いてもいいんだろうか。
よく考えると、ストーリーと関係ないので書いてしまう。
主人公たちが乗った「即時裁判所」(うろ覚え)とボディに大書きした車両が映画のキモなのだが、その車両が走っているシーンになる。
よくある映画のシーンの回想か、と思っていると、じつは違う。
戦時中のドイツのはずがいつのまにか背景が今のドイツになっているのだ。
ここ、風刺が効いていると思った。
プロットが強引と書いたけれど、映画の目的が違うと考えると、この作品はこれでいいのかもしれない、とその最後のタイトルバックで考えるようになった。
大佐になりすました二等兵の実話をもとにしているとのことだけれど、現代のドイツのみならず欧州の風刺としてみることが出来る。
そう思って観るとなかなか練られた映画なのだ。
そう思って一度観てみてください。
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