フェラーリデザインの話

フェラーリの新型車「ローマ」で驚いたのは、大胆なスタイリングコンセプトだ。エレガンスにうんと振ったのは意外だった。


フェラーリの昨今のモデルといえば、F1をやっているだけあって、空力のかたまりのような外観が特徴だった。空気の流れを徹底的に研究して、抵抗を減らすこともやれば、逆に前後輪にダウンフォースを生む構造も取り入れている。


ローマは、ところが、目立ったスポイラーなどいっさいない。曲面の美しさを強調したスタイルだ。メーカーでは、50年代のフロントエンジンのGTモデルからインスピレーションを得たというが、私は72年の「400」や92年の「456」を思い浮かべてしまった。


そっちからのヒントもあるでしょ?と、デザインディレクターのフラビオ・マンツォーニ氏に確認したら、「いや一切ないですよ」と思いっきり否定されてしまった。

負け惜しみではないけれど、重要なのは引用元ではなく、優雅なスタイルにフェラーリが回帰したことなのだ。もちろんミドシップのスポーツモデルは性能を追求する路線から外れないだろう。しかしなにはともあれ、ローマの路線も魅力的だ。


おもしろかったのは、フェラーリが「フェラーリ初心者、いえ、スポーツカー初心者にも乗っていただきたい」と言っていたことだ。性能はあるていどベースになっている「ポルトフィーノ」より上なのだが。

ogawa fumio HP

小川フミオのホームページ フリーランスのライフスタイルジャーナリスト。 クルマ、グルメ、ファッション(ときどき)、多分野のプロダクト、人物インタビューなど さまざまなジャンルを手がける。 編集とライティングともに得意分野。ライフスタイル系媒体を中心に紙とウェブともに寄稿中。